公開初日に3回みるというキモさを発揮する私ですが、贔屓抜きでも最高傑作だった。
この映画こそが百人一首。
無限未来につながる映画。
これがすべてを表している。
いつも長いけど、今回はより長くなるかも。
まず、冒頭からうますぎる演出で舌を巻いた。
「ちは〜」の札を取る千早。
千早の得意札を千早が渡す相手は詩暢…!
詩暢に「ちは」を取られたのか!と思うのもつかの間、
千早はその試合の札ガールとしており、
対戦していたのは新キャラの伊織。
そこから始まる新キャラをうまく不自然じゃなく説明する様…。
すごい…。
その後も積み重なる演出のうまさ。
相変わらずの詩使い、机くんの模試点数からわかる太一の思い、計算づくされた構成が素晴らしすぎた。
そして、ギャグのセンスも前作は少しいびつだったところもあったけど、
今回はかなり自然な笑いだった。
(映画館でみんながドッと笑うと、とてもそこはいい空間になります。だから、恥ずかしがらず笑ってください。)
構成といい、笑いといい、小泉監督もより一層腕を上げ、情熱を注いだことがわかる。
俳優たちの情熱もパナい。
とくにこの作品の思いから改名した新田真剣佑は前作は新人同然だったから、
成長ぶりはすごい。
みんな自信がみなぎっていた。
そんな中で新キャラも出てくるので、
ひとりひとりを描くのが薄くなるのでは?
と思ったけど、短い中でしっかりと新キャラの弱さや成長を描いていたのもすごい。
それを物語とは別口ではなく、物語の線に沿って描いているところが本当にうまい。
そんな監督や出演陣が情熱を捧げた今作は
下の句から続く「情熱の波及」がキーとなる。
下の句は新から千早へ、千早から同期部員たちへというところであったが、
今作は後世たちへ。
「2人が入ってきたとき、何か新しいことが起きる気がした」、
千早が最後に後輩たちに伝える。
千早の情熱は波及し、人に伝わり、周りの人を鼓舞する。
それが、真の強さという。
そんな中、この映画の真の主人公、太一はこの映画ではかなり弱っている。
そこで名人の元で修行するわけですが、
今まで人のために頑張ってきた彼が始めて自分のために頑張った。
そこで超越した彼は、前作では
運がなく取れない男→取れないなら、取りに行く男→運命の方から来るようになった男に成長したのである!!!!!
しかし、この強さくれたのは千早と名人である周防。
チャンスはドアノブがなく、自分で開くことはできない、誰かが開けてくれた時に準備できるかで変わると教師は言う。
でも、この開く役目をしたのは千早や周防だけではない。
カナちゃんだって、ちはやたちに歌の素晴らしさを与えた。
机くんだってデータで戦術を考える術を与えた。
人は1人では成長できない。
いろんな人がいろんなチャンスをくれることで、成長していく。
それは思った通りの未来じゃない、でも思った以上の喜びを得られた。
人生で思わず人生が予想外の方向に進み、
とても良い経験が得られたことってないでしょうか?
僕はあります。
人生ってそうやっていろんな情熱に影響を受けながら成長していくことが楽しいって思います。
そんな情熱の波及が、
一瞬を一生に変えるとこの映画は言う。
そもそも百人一首も同じです。
一瞬で詠んだ詩が、一千年も語り継がれるものとなり、
こうやって青春の情熱を与えている。
千早たちも競技かるたの情熱を後世へ繋いでいく、
そして、この映画こそが私達、そして、一千年後の未来へ情熱を与えている作品となることがわかる。
だからこそ、青春の情熱を伝えるのには
競技かるたが一番の部活であることが明快である。
(ウェットな作りの中に、少し笑いを入れるこの映画の作りも競技かるたの「タイミング」と同じこともわかる)
こうやって人生の哲学を教えてくれる映画でもありながら、名人たちの不気味さを描くホラー映画でもあり、カルタの試合のロジカルなハラハラするアクション映画でもある今作は本当に大傑作です。
2年前の3月に、友達と新宿で遊んだ帰りにふと見にいった作品がこんなにも自分の人生に情熱を与えてくれるとは思わなかった。
少なくとも、俺には無限未来永遠になった作品である。
実は小泉監督は母校の先輩でもあるので、
小泉監督、後世にその情熱届いてますよ!
俺もいつか、ちはやぶるになれるように、
人生ここから始まる。