三樹夫

X-MEN:ダーク・フェニックスの三樹夫のレビュー・感想・評価

X-MEN:ダーク・フェニックス(2019年製作の映画)
3.1
うーん…いやまさにうーん…としか言えない映画になってる。「ダーク・フェニックス」とタイトルは凄くカッコいいんだけどね。この映画はとんでもない赤字となり新シリーズは今作で終わりとなった。脚本の書き直し、結末の変更、撮り直しなど製作のゴタゴタも影響してるような映画になってしまった。

1992年、X-メンはスペースシャトルの救出へ向かい、ジーン・グレイが太陽フレアを浴びて強大な力を発揮してしまうという話。新シリーズはそれぞれ60年代、70年代、80年代とやってきて今作は90年代だが、もういよいよ時代設定がほぼ何の意味もない。90年代感は皆無。
3,4時間ぐらいかかる話を2時間に無理矢理まとめたダイジェストみたいになってる。『X-MEN:ファイナル ディシジョン』と同じ轍を踏んでどうすんのと思うのだが、シリーズ最終作は『X-MEN:ファイナル ディシジョン』化する運命なのだろうか。ジーン・グレイの闇落ちしてさらによく分からん宇宙人もいてで、観てて絶対2時間でやる話じゃねぇだろと思っていたが案の定ダイジェストみたいになって終わっていった。
話の筋のためにキャラクターを動かしてる感が凄くて、なんか闇落ちしたと思ったらなんか闇落ちから復活している。展開のために都合よくパトカー現れたり、髪ムチおじさんはストームが手持無沙汰にならないための数合わせ感満載だった。プロフェッサーXはただのクソハゲでしかないし、宇宙人も何だったんだこいつらとしか思わないし色々とっ散らかっている。ミスティークの扱いも雑で、最後までミスティークはいい人だったけど、新シリーズの実質的な主役なのに他にやりようがなかったのかな。
能力バトルも個々の能力を活かした工夫はなく、基本的には火力押しで暴れているだけ。丸刈りサイキッカ―と髪ムチおじさんの新ミュータントが戦うが見せ場全然ねぇ。どんな能力バトルを見せてくれるかとうワクワクはない。
今作では誰と戦うかですごい苦労しているように思え、そこでジーン・グレイ闇落ちに宇宙人とバトルというのは苦しさを感じてしまう。

微妙な映画だが全くいいところがなかったわけではない。サイクロプスが光線出して列車の中を少しずつ進んでいくカット良かったし、マグニートーの鉄砲乱れ撃ちも良かった。ストームも戦ってる時カッコいい。チャールズとエリックがチェスするのはやっぱりいいなと思うし。
マグニートーはコミューンを築いていると、左翼革命家の老後か。それにしてもマグニートーの人生悲惨過ぎる。マグニートーに残されたのチャールズしかいないやん。

今作でやろうとしていることは能力(gift)、つまり与えられたものをどう使えばいいのかをやろうとしていると思う。能力(gift)を間違った使い方をすればダーク・フェニックスになり悲しみを生み出すだけでそれは提示していると思うが、能力(gift)をどう使うかというのをしっかり回答を示せれば良かったと思うが、手が回らず終わってしまっている。
またクソハゲと化したプロフェッサーXのやり方、自分の身を危険にさらしてまで奮闘して社会に認められるというのにも取り組んで何らかの回答を示したかったように感じる。被差別者やマイノリティーは業績や貢献を果たさなければ認められない社会ってどう考えてもおかしいし。私なんかは何の業績もないし貢献もしないがのうのうと生きてるし、これが被差別者やマイノリティーは業績や貢献を果たさなければいけないというのは違うように思う。

新シリーズ開始で最高のスタートを切ったのに新作の度にトーンダウンしていく出来なのは残念過ぎる。順当に次を作れば2000年代編でこれで完全なリブートになっていたと思うが、結局今作の90年代で終わったことで旧『X-MEN』三部作の単なる別ルートみたいになっちゃたな。
三樹夫

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