DerZauberberg

検察側の罪人のDerZauberbergのネタバレレビュー・内容・結末

検察側の罪人(2018年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

自分でもなぜか分からないが、このタイミングで初鑑賞。

木村拓哉という人間は、歳とるごとに良い役者になるなあと改めて思う。同じ検察官役でもHEROの時は与えられた役柄を演じることに精一杯な感じがしたが、今回は重厚な人柄を容易く演じることに加えて、キムタクらしい「軽さ」(誕生日が同じ人を列挙していく箇所とか)をも随所に見せる余裕っぷり。他方で、拳銃の扱いに慣れてない仕草や、発砲した後の「ほんとにやっちまった」感もきちんと表現する。うまい。
二宮については、あの尋問シーンの凄みは観た人全員が口を揃えて指摘する所だろうからあえて何も言うまい。私はあのシーン、何回か「ヒッ」って言った。怖くて。

作品全体に関して言うと、前半で警察•検察が事件の謎を丁寧に紐解いていくのに比べて、後半からの真相解明パートが、居酒屋での犯人による自分の殺し自慢がきっかけに始まるという脚本には少なくないがっかりを感じた。事件解決に対する捜査当局側の熱量と、ストーリー上の展開のバランスが合ってないので「思ったより呆気ない」という印象が強くなってしまう。

ただ、今作品で最も厄介なのは左翼的思想の扱いです。作中、陰に陽に結構な頻度で「日本が戦前の軍国主義に戻ろうとしている」とか「インパール作戦を繰り返してはならない」みたいな明らかな政治的メッセージを含むセリフが、脈絡なく登場人物から発せられる。これは難しい。というか、これなんだ…??
確かに旧日本軍の愚行や組織的腐敗、そして彼らをいまだに神格化する右翼的政治家には自分も吐き気を催すとこではあるが、それ今、関係なくない..?

そういうセリフがストーリーに対して明らかなノイズになってる。観てるこっちは、そういう政治的セリフが後々、事件解決に効いてくるのかと身構えるも、それらが回収されることはないので、無駄に疲れるだけである。あの同級生の代議士の話、全部カットしても映画として成立するよ。

ただ、上のような要素を抜きにしても、上質なサスペンスであることに変わりはない。観てよかった。
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