ブラックユーモアホフマン

グッド・タイムのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

グッド・タイム(2017年製作の映画)
4.9
ようやく。

慣れてきたぞサフディ兄弟のイライラエンターテイメント。先に観た次作の『アンカット・ダイヤモンド』と全く同じ作風だが、『アンカット・ダイヤモンド』よりはイライラしないで済むのは主演がロバート・パティンソンだからかな。アダム・サンドラーの方が数倍イライラする。ある意味、サフディ兄弟の作家性にはサンドラーの方が合ってると言えるのかもしれないけど。

あと、『アンカット・ダイヤモンド』のアダム・サンドラーは一応カタギの人間だからよりハラハラするけど、本作のロバート・パティンソンはもうコイツがどうなってもいいやと思いながらこちらも見ていられるから気が楽なのかも。

ロバート・パティンソンが正真正銘のクズを演じていて清々しい。行き当たりばったりで何も上手くいかない。妙なところで気が利くけど、全体の見通しは全く立てられない。

一瞬もGOOD TIMEなどなく、ずっとBAD TIMEの連続に見える。けど、結末や結局そこまで何とかなっちゃってるのを見ると、意外とGOOD TIMEを引き寄せる才能のある男だったのかも。

弟を取り返したい、その後のこととかも全く考えずとにかくその一点だけを目標に動くキャラクターだから分かりやすくていい。『アンカット・ダイヤモンド』はその点、主人公の動機が複雑でよりイライラした。

『アンカット・ダイヤモンド』の方向性を突き詰めていくならついていけなくなるかもしれないけど、本作くらいのバランスの作品を作ってくれるならついていきたい監督。ベニー・サフディ、演技上手え〜。嫉妬するなあ。

赤を基調としたビビットな色遣いが見て楽しく、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(a.k.a ダニエル・ロパティン)のキレキレの音楽が聴いて楽しい。

イギー・ポップをフィーチャリングに迎えたエンディング曲もぴったりで良かった。

『アンカット・ダイヤモンド』のイディナ・メンゼルといい、本作のジェニファー・ジェイソン・リーといい、キャスティングの妙が光ってる。バーカッド・アブディの出演も嬉しい。

スクリーンで観られるタイミングまで待って良かった。相当好きでした。傑作。

【一番好きなシーン】
・オープニングクレジットに至るまでの冒頭シークエンス。
・アイツがどうして顔に傷を負ったかまでを語る唐突な回想シーン。