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リバー・オブ・グラスのSPNminacoのレビュー・感想・評価

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)
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ケリー・ライカールト94年作は、サバービア映画だった。かつてリバー・オブ・グラスと呼ばれたその草原にはハイウェイという川が流れている。人生は水のない川を惨めな死に向かって流れていく。親世代と同じように繰り返される無為な結婚、子育て、持て余した時間、銃を失くした警官、リンボー(辺獄)に囚われた人々。そこから脱出するには、ちょっとした事件が必要だ。失われた未来を叩き続けるジャズドラムが、コージーを不毛な日常の外へと促す。
とはいえ女と男が出会って逃げて、どこへ行ってもサバービア。コージーが浸かる風呂やプールも流れない水たまり。サバービアを包囲するかのようなハイウェイは、通過していく人々のもので住人は町を出られない。発射した弾、一線を越えたつもりの男女も、予め線引きされた境界の中。そこは男リーにとってcozyな安全圏でもあるのだ。
青い車に青い服、何をしようが埋没してしまう景色。殺人犯になれない自分は何者でもなく、写真やレコードの古い宝物は足止めになる。裸足じゃ逃げられない、銃は役に立たない、でも車は自由を乗せて進む。男は失くすが女は捨てる。コージーは邪魔な荷物を投げ捨て、自分のことだけ抱えて流れないハイウェイを流れていく。意外にもスカッとする最後だった。
主人公だけでなくみんな太々しい顔した住人と、音楽(あのレコードコレクションも)の趣味が良かった。いきなり日本語表記のガイドマップ本が出てきたけど、あそこまで観光客来るのかな?
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