MasaichiYaguchi

ゲーテの恋 〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.6
本作の原作である「若きウェルテルの悩み」を読んだのは、今から40年以上前だ。
映画では「若きウェルテル」のモデルであるゲーテが本から飛び出して、若さと情熱を弾けさせ、スクリーンのなかで躍動する。
この作品の主人公二人、ゲーテを演じたアレクサンダー・フェーリングと、シャルロッテを演じたミリアム・シュタインが、瑞々しく演じていて魅力的だ。
彼等の若さゆえの情熱や行動が、その清新な演技によって我々観客をゲーテの青春時代に誘う。
ゲーテの時代は、家やしきたりに縛られて自由な結婚も儘ならなかった近代、現代のように安易に駆け落ちも出来なかったと思う。
ゲーテとシャルロッテとの恋の悲劇は、「家」を尊重するこの時代において必然的だった。
ただ、このような時代性の縛りを越えて、本作は我々にある普遍的なものを示してくれる。
それは「恋は素晴らしい!愛することは、何物にも代えがたい!」ということ。
自分の弟や妹、父を思い、そして何よりもゲーテの類まれな才能を尊重するが故に、自ら身を引いたシャルロッテの究極の愛。
当初は、シャルロッテに裏切られたと思い、絶望の淵にいたゲーテも、その痛みから立ち直り、彼女の限りない愛情に気付いていく。
現実の恋愛は、2人の気持ちが醒めたり、年を経るごとに色褪せていくが、文学に残された2人の恋物語は永遠だ!
熱々のカップル、恋愛倦怠期のカップル、恋愛なんて遠い花火のように思われる人々も、この映画を観ると原作を読み返したり、「恋することの素晴らしさ、愛することの大切さ」を再認識したくなるような気がする。