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白い鳩のadeamのレビュー・感想・評価

白い鳩(1960年製作の映画)
3.0
フランチシェク・ヴラーチルの長編監督デビュー作。
寓話のような物語で、伝達がテーマとして置かれている印象でした。
連絡、表現、祈りなど、メッセージを発信して伝達することにも意味は様々で、今作ではそれぞれの伝達において鳩がその媒介となっています。
鳩が飛び立った後の空をゆっくりとパンしていくラストカットにおいても、わざわざ屋上に設置されたアンテナをいくつも映り込ませていることが象徴的でした。
映像で語るスタイルによってセリフの数は絞り込まれ、それゆえ呼びかけられる名前に自然と注目が向くしかけも巧みでした。
神のごとき者を意味する大天使ミカエルの名を持つ少年は高所から堕ちて自由を失います。
そんな車椅子の少年を迎えに来るものの、部屋の中にまで入ることのない双子は伝道師と同じ名のペテロとパウロと呼ばれ、鳩に襲いかかる黒猫はサタンの名を与えられています。
マグダラのマリアと共にイエスに仕えた女性と同じ名を待つ少女スーザンは、鳩の帰りを祈るように待ち続けます。
傷ついた鳩がミカエルの元で傷を癒やし、再びスーザンの元へと戻る手助けをするのが芸術家であるという設定に、監督の表現者としての使命の投影を見た気がしました。
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