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英国総督 最後の家のinuのレビュー・感想・評価

英国総督 最後の家(2017年製作の映画)
5.0
印パ分離独立を極めて中立的な立場から描いた映画。英国統治下インドにおけるムスリムとヒンドゥーの宗教対立は英国がヒンドゥスターニーから自国への反発を避け、円滑な統治支配を行うためにでっち上げたストーリーだが、この作品では英国の責任にも言及しており、ヒンドゥスターニーへの責任転嫁をしていないところに好感を持った。劇中のネルーのセリフ「(ムスリムとヒンドゥーの対立の)元凶はイギリスによる分割統治だ。同胞が憎み合うようにあなた方は仕向けた。」はまさにイ英国の責任に触れる部分である。序盤はジンナーが悪者であるかのようにインド的な視点から問題を描いている。しかし、後半ではルイス・マウントバッテンがチャーチルを「(パーキスターン建国の)助産師」と揶揄したセリフからもわかるように、英国が陰で糸を引いていたことが暴かれる。この構成も圧巻であった。
現在、カシミールをめぐる対立が激化するインド・パーキスターン。しかし、その内実は英国の生んだ不要な宗教対立を発端としていることは改めて理解し、その上でヒンドゥスターニーの動向をみつめるべきだと思う。イムラーン・カーン大統領の譲歩にも乗らず、一方的に激昂するモディ首相の態度は単に選挙のためのパフォーマンスで、今や宗教対立はヒンドゥー至上主義によるナショナリズムの鼓舞のためにしか使われていない現状は見るも無残だ。
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