YUKi

女は二度決断するのYUKiのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.5
イギリスのEU離脱後のドイツが舞台。
極右組織NSU=ネオナチ夫婦の
無慈悲すぎるテロ事件により、あっけなく
最愛の息子と夫を失ったカティヤ。

そんな悲劇に始まり、裁判劇、復讐劇の
3部構成に渡る物語。この構成、
よくよく考えると見事!のひとこと。
プロットくらいでは想像できない、
あらゆる意味で不意打ちの傑作だと思う。

事件後、かなり丁寧に尺を取り
進められた裁判は、勝算ありだと
信じて疑わなかった。

夫がトルコ人であったため
トルコ人同士の抗争では?と誘導する
悪どい被告人側の弁護士含め、
ネオナチの冷酷さ全開の裁判に反して
カティヤの友人弁護士が心底いいやつ。

どういった関係性かは描かれていませんが
家族同様にカティヤに接し、
登場人物の誰よりも
自分にできることのすべてを
彼女に与えようとしていたのは彼だと思う。

与えるやさしさ、与えないやさしさ、
いろんな種類があるけど、彼の存在を
思い出したら泣けてくる。

観客は“もの語らず”の主人公の気持ちを
理解しようと追いかけるしかなく、
演じるダイアン・クルーガーの
演技力がなくては成り立たないので
主役を張ってくれて感謝!の域だった。

表情、佇まい、数少ない台詞のすべてに
まぎれもなくどこの誰よりも大切な人を
失った悲しみと怒りを孕んでいた。

わたしも泣いたし、わたしも怒った。

今も許していない。
許すことなど許されない。
ネオナチ夫婦の一挙一動には
未だに生々しく怒りをおぼえる。

思い返せばそんな絶望的な背景のなかに、
人間が人間であるために在るべき情や
“人”に対しての敬意が描かれていることも
この、今の現代劇だからこそ
必要であるんじゃないかと思う。

もうね、この作品、わたしにとっては
「スリー・ビルボード」と
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」
なんですよ‥。
説明できないくらい好きな2作品と
めちゃくちゃ重なる。突き刺さったまま
抜けないシーンだらけ。
ついつい思い返して涙ぐむシーンだらけ。

あの日あの時あの人の気持ちは‥。
とかあの人の言葉が、シーンが‥とかね。

最後の最後にカティヤが取った行動は、
究極の怒りであり、復讐であり
堪え難い苦慮の末の諦めかも知れないし、
自分自身に対しての赦しかもしれない。

‥このまま感想を書き続けると
ネタバレしてしまいそうになる。
感情のままに溢れ出そうになる。
ので、とりあえずシメます!
YUKi

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