蛸

ヴェノムの蛸のレビュー・感想・評価

ヴェノム(2018年製作の映画)
3.8
スパイダーマンの敵の1人としてトッド・マクファーレンに生み出されたアンチヒーロー、ヴェノムの単独映画。

とはいえ今作にはスパイダーマンは登場しません。そのためヴェノムの胸には蜘蛛のマークはなく、その能力がスパイダーマン由来のものであるというわけでもありません。
その結果何が起きているのか?

端的に言えばこの映画ではヴェノムがストレートなヒーローとして描かれています。
宿主であるエディ・ブロックは善人であり、それに寄生するヴェノムはめちゃくちゃ物分りが良いです。
元々スパイダーマンのアンチヒーローとして生まれたヴェノム。スパイダーマンがいなければ彼がただのヒーローになってしまうというのは実はとても納得のいく展開だと思いました。

残虐非道なヴェノムも良いですが、負け犬同士がお互いの利害のためになし崩し的に手を結んで結果世界を救うという展開もベタですが燃えます。
エディとヴェノムの掛け合いはほとんど漫才のようで、凶悪な見た目に反してヴェノムはとてもかわいい。
映画全体を通してコミカルなシーンも多く意外にも楽しいスナックムービーとしての側面が強い作品です(そのあたり硬派なギャングものかと思ったら軽く楽しめる娯楽作だった監督の前作『LAギャングストーリー』を思い出させます)。

ヴェノムは90s的感性の結晶ともいうべきキャラクターだと思うのですが、90sの悪ノリ感みたいなものが炸裂した映画です(その意味で最近では『ザ・プレデター』に近い作品かもしれません)。

欠点を挙げるとすれば、前半が退屈なことと、クライマックスの格闘シーンの見辛さでしょうか(2000年代後半的なCG満載でやたらとめまぐるしいド派手なだけのカメラワークの映像)。
この映画を見て「ヴェノムが漂白された!」と怒る人がいても気持ちはわかります。
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