ゆず

ジュピターズ・ムーンのゆずのレビュー・感想・評価

ジュピターズ・ムーン(2017年製作の映画)
3.7
長回しが多い。ワンシーン、ワンカットくらいの勢いだった。カーチェイスのシーン(というかカット)は凄い。
少年アリアンが宙に浮くとカメラも浮かび上がり世界がぐるぐる回転する。浮いてない時の長回しは平面でぐるぐる回るけど、浮いてる時は縦にも横にも回る。なので、空に浮かぶ少年を撮っていたかと思えば、街を見下ろす絵になってたりして、しかもその二つが長回しで一つのカットに収められている。どんな風に撮ったのだろう。
しかし映像としては面白いのだが、そんなシーンが複数回あり毎回スローテンポなので、また飛んでる〜とまったり見てしまう。(重力操作で部屋がかき混ぜられたようにめちゃくちゃになっていくところは凄かった)ハリウッドのヒーロー映画のような興奮はあまりない。ビューンという感じじゃなくて、フワワ〜という感じ。あっ、ハンガリーの映画なんですけどコレ。

浮かぶということがとても象徴的な意味合いをもっていて、ヒーローだとか、超能力だとか、そんな俗っぽい感じではない。むしろオカルトに近くて、静かで薄暗い画面の中で「奇跡」の御業が発現するところに「畏怖」を感じるような絵作りになってると思う。
シリア難民問題とか、テロとか、社会が抱える問題やハンガリーだけに留まらないヨーロッパ全土を覆う閉塞感が表現されている。タイトルについては冒頭で木星の衛星エウロパに触れただけで鑑賞後も意味が分からなかったんだけど、エウロパはヨーロッパと語源を同じくするらしく、つまりもう一つのヨーロッパ、されど確かにこれも一つのリアルなヨーロッパであるとの思いがあるのかもしれない。
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