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ジュピターズ・ムーンのShinMakitaのレビュー・感想・評価

ジュピターズ・ムーン(2017年製作の映画)
2.0
闇に乗じてハンガリーに密入国を試みたシリア難民たち。しかし上陸地点には警察が待ち構えていた。逃げ惑う難民たちだったが、その内の青年アリアン・ダシュニは猛ダッシュして森に飛びこみ追跡をかわした。しかし追いついた刑事ラザロに見つかり、いきなり胸に3発撃ち込まれてしまう。

逮捕者を収容する難民キャンプに、医師シュテルンが到着する。病院の勤務医だった彼は、患者を死なせた医療ミスが元でキャリアを失い、なんとかこのキャンプの医療スタッフの職を得た。しかし、医療ミスの賠償金を稼ぐため、密かに難民たちからカネを受け取り、キャンプ外へ出る手助けをおこなっていた。そんな彼の元に、銃で撃たれたアリアンという難民が運ばれて来る。診察しようとしたシュテルンだったが、その姿を見て驚愕する。アリアンは銃創から血を滴らせながら何事もなかったかのように起き上がり、重力を操り空中浮遊をしてみせたのだ。「奇跡」を目の当たりにしたシュテルンは、アリアンを自由の身にして利用し、カネを稼ごうと企む。しかしキャンプから消えたアリアンとシュテルンを追って、ラズロが捜査を開始し…



という「ジュピターズ・ムーン」を観た。木星の月→エウロパ、すなわちヨーロッパであり、難民たちの目的地、という意味のタイトルかと安直に思ってしまったのですが…


以下、ネタバレ・ムーン



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…私の解釈は、今年1発目の、「近年流行のキリスト映画」でした、というところ。しかもアクションSFサスペンス風味という変わり種。奇跡を起こす青年とダメ医者の出会いのドラマなんですが、シンプルなストーリーの中に難民問題やハンガリーの現実を盛り込んだ社会派映画と捉えるも良し、斬新で挑戦的なカメラワークを駆使した逃走劇メインのアクション映画と捉えるも良し、そして俺みたいにキリスト教メタファー映画と捉えるも良しで、見方によって味わいが変わる映画と言っていいでしょうね。こじつけを許してもらえば、アリアン=キリスト、と思わせる部分はかなりあるんですよ。父親の仕事は大工だし、復活を遂げるし、罪を背負うことにもなるし。で医師シュテルンはというと、これはやはり使徒ですよ。ペトロでありユダでもあり…最初の出会い、シュテルンの顔に与えられたのはアリアンの血です。最後の晩餐でキリストが使徒たちに与えたのは、キリストの血ですよ。あるいは、シュテルン・ラズロ・ヴェラをキリスト生誕に駆けつけた3博士とも捉えられるかも知れません。彼らは何の博士だったかというと、占星術ですよ。ほら、タイトルが生きてくるでしょ(笑)


それにしてもハンガリー映画も侮れませんなぁ。見せ方の工夫というか、斬新さは「サウルの息子」を例に出すまでもなく、ハンガリー映画が相当進んでいることの証明ですよね。

というわけで、中々面白い作品。オススメです。

…あ、一個だけ疑問。シュテルン、いつの間にか新しいケータイ手にしてたけど、あれどーしたの?(笑)
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