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ラブレスのhkのレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
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定点固定で、音楽も派手ではなく、上品な造り。
捜索シーンに多くの時間が割かれていて、山やマンションに入るシーンは細かな指示まで実際的でリアル。

大人になれなかった人たちには、不快は、必ず外部からやってくる。

① もともと愛のない夫婦の間に起きた、子供の失踪は何を意味するのだろうか。アレクセイの失踪の前後で、夫婦個人の人間性に変化は見られないように見える。
しかし、関係性には影響を与えた。もともと、アレクセイの存在は、離婚の障害になっていた。アレクセイの失踪は、両親の愛を再確認させるどころか、矛盾にも父母の離別を助長した形になる。アレクセイが失踪していなければ、泥沼の罵詈と叫喚を伴った着地になっていたはずだが、実際は緩やかな分離を迎えた。

② 2012年のマヤ暦騒動と、2014年のクリミア問題。
夫婦間のlovelessという問題が、ロシアという国全体へと敷衍した描写になっているようにみえる。単なる異常な夫婦が出てくるサスペンスで終わらせたくなかったのだろう。

③ sexのシーンに力点がある。
夫婦それぞれの浮気相手との関係性の基礎となるものが、sex以外にないことを浮き彫りにしている。普通、妊婦相手に林檎を投げたりしないし、食事中に過去のsexのことを言われて喜ぶ男はそんなに多くないだろう。新たな関係も所詮愛のないまやかしであることがわかる。
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