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女王陛下のお気に入りのkyonのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.5
"理解"するアビゲイル、"翻弄"するサラ、女王をめぐる女性による女性のための闘い。

エマ・ストーンの悪女さがもはや突き抜けていて最高に気持ちがいい!笑

女性をめぐる心理戦や宮廷バトルにはドロドロした感情がつきもので、それを見つめるにはエネルギーが必要になる。

けど、この作品にはそんなドロドロした感情に使うエネルギーよりもどこか共感してしまう瞬間が勝つ。

それはオリビア・コールマン演じる女王にも、エマ・ストーン演じるアビゲイルにも、レイチェル・ワイズ演じるサラにも自分の役割を守りたいという部分と幸せになりたいという欲求の両面が見えるからかなと思う。

そしてそんな人間くささが垣間見えるから笑いがこみ上げてくる。冒頭から女王のメイクをアナグマと言い放つサラや、階級異動のためだけの男性を翻弄するアビゲイル、宮廷の日常の中には常に憎しみがあるわけではなく笑いや哀しみや怒りといった様々な感情が溢れている。だから結構笑っちゃって、その自分の感情の振り幅が新鮮で面白かった。

ラストのサラの、「私は嘘をつかない、嘘をつかないことが愛よ」と言い放つ場面は切なくも、そうだよななんて思って印象に残っている。

何より、こうした作品の世界観を形にした、という意味ではサンディ・パウエルのフィクショナルな衣装は重要。

コメディ調も含まれていることや女性たちに焦点を当てている本作の中で、その女性たちに強度をつけているのが時代考証よりも創作を優先させた衣装たち。

デニムのような生地から装飾まで当時にはないようなアイテムを取り入れながら宮廷ドレスをアレンジ。すごいのはだからといって違和感はなくて、それは型自体は当時をある程度再現しているからなのかな。『俺たちに明日はない』の衣装たちも同じ流れで製作されていることを思い出して、こうした衣装に出会えることを嬉しく思う。

『女王陛下のお気に入り』はそのフライヤーからポスター、作品自体までトーンが統一されていて最高に好きなビジュアルだった。
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