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女王陛下のお気に入りのgnspのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
4.5
満ち満ちた宮殿で日々を送ろうとも満たされない女たちが、各々の「幸せ」を探る物語。
しかしその道に茨を敷き詰めあうのは、他でもない彼女たち同士だった。

まずもって建物も衣装も、めちゃくちゃに着飾らせたるわ!と言わんばかりにとんでもなく華やかで美しい。この時点で視覚的に楽しくて没入してしまう。
でも美しい側面だけじゃなく、泥や汚れ、最下層の醜さもまざまざと描写する。
そして当時に照らし合わせて、夜がちゃんと「暗い」。いやもう暗いなんてもんじゃない「黒」。廊下でさえも灯火の周りはなにも見えない。ソワソワさせるようなこの暗がりを利用した展開もまた面白い。

アン女王の時代だったからか、現代にアダプトしてるからか、3人はとても「強い」。
この強さは3人で持ってるものが違って、アンはシンプルに「権力」。アビゲイルとサラはどちらも「政治力」を持っているが、前者は「執念」、そして後者は「愛」を持っている。
2人は似たところにいるけども、やはりこの違いがそれぞれの行動を変えていく。そして持ちかたが変わっていって…
その2人の中心にいるのは、しかしとても中心にいちゃいけないようなわがまま王女。まさに本能がまま、二転三転ヒステリック。オリヴィア・コールマンの怪演に釘付け。
そしてその周りにいる男の頑張りには目も向けられないのだ…ゴドルフィンさんめっちゃ頑張ってたんだけどね…

あとやはりチェックしておきたいのはランティモスの動物使い。今回最も重要なのはウサギだった。
彼らのイノセンスさと人間の欲深さ・罪深さの対比は、最後の最後に非常に色濃く現れる。
でもウサギって死ぬまで発情期って言われてる、そして死ぬまで発情期なのはウサギと人間だけとも。
つまり「上っ面の美しさの下に何を考えているのかは分からない」ってこと。
そしてそれを最初から分かっていて行動していたのは誰なのか。その人が放ったあの言葉は忘れがたい名台詞。


美しくそして醜い宮殿の諍い…なんて内輪っぽい話だけど、よくよく考えたらガッツリ国の行く末を巻き込む話だったりするぜ!
さあ、ご賞味あれ。
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