大女優3人の演技バトルが面白怖い宮廷愛憎物語。三大女優によるゲロシーンが必ずあるのが何気に凄い。
キューブリックよりも歪んだ広角レンズで権力闘争をする滑稽な上流階級の面々を冷ややかに笑う演出が嫌味で良い。
エマ・ストーンの女優としての成長っぷりに心から拍手を送りたくなった。スパイダーマンの頃から比べて成長が凄まじい。ヌードシーンの艶かしさと恐ろしさは他の若手女優には出せない凄味を感じた。
しかし、全てはオリビア・コールマンの異常な存在感に全て持っていかれた。彼女はドラマ「フリーバック」でも映っただけで緊迫感を生み、こちらの感情を逆撫でする凄まじいオーラがあったが、さすがオスカー取るだけあって今回の迫力は異常。ここまで映るだけで全て持っていく存在感のある俳優はなかなかいない。ソン・ガンホやピーク時のジョニーデップを思い出した。彼女はこれから凄い経歴を残していくでしょう。
ランティモス監督は「籠の中の乙女」しか見ていないが、人の神経に障る演出が素晴らしく、今回も音楽の使い方や断絶の仕方も含めて、本当に嫌なやつだと確信させるものがあった。
てか毎回、閉じ込められた動物のような人間を出している。そして今回は室内ウサギと飛ぶ度に撃たれる鳩が色んなメタファーとして分かりやすく登場している。レースさせられるロブスターも哀れだ。
見終わった後、感じた異常な虚無感は凄まじく、完成度は高いのに少し嫌になるレベルだった。
それこそ、監督の狙い通りなのだろう。
本当に虚しいくらい無になってしまった。