イライラコント劇場。
思いやりや平等がテーマであるはずのアートがむしろ人々の無関心や悪意を浮き彫りにするという筋。
「YOU HAVE NOTHING」という冒頭に出てくるインスタレーションの一文がわりとすべてでは? この映画にも特に中身はないようにみえる
ただし演出はすごい。どこからか子供の泣き声がずっと聞こえていたり、細部で観客の神経を逆撫でしてゆくスタイル。それらは特に物語に直接関係はない、というのがいい。
そういえばヒッチコックの『めまい』じゃないけど、それリスペクトのショットも。
四角い螺旋階段をひたすら上っていくのをじっと見下ろす。目が回る。直後の静止したカットまでが錯視で歪んで見えた。
でもあんまり心には響かなかった。
描かれているのがあまりにも表面的な性悪説のように感じたというか……悪意・善意以前にそもそも人間ここまで馬鹿か? という気持ちになった。
『フレンチアルプス』のほうが圧倒的に好き。あれでパルムドール取ってほしかったな……。
比べるのもどうかと思うけど、ハネケの性悪説のほうがよほど不快、どっちもねちっこいけど。