四角に区切られた空間『ザ・スクエア』。
このアート作品の空間内では
「すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われる」
とされ「思いやりの聖域」がテーマになっているという。
予告編も面白そうだったのに、私には合わなかった。
やたら理想化されて語られる北欧スウェーデンにだって、
格差も差別もネット炎上もスリも離婚も移民問題もありますと、
冷静な目で見つめてみるというドキュメンタリー的な見方をするなら良いけど、
映画として楽しむことが困難だった。
スピード感もないのに上映時間が長すぎるし、
出来事が次々に起こるもののほとんど投げっぱなし、
エピソードをただ連ねて何となく主人公が転落していく。
魅力的な人物がほとんど出て来ず、感情移入も出来ない。
何も面白くない。
パンフレットにも人間の本性を暴くとありますが、
この映画のどこでそれが暴かれたんだろう?
人間の醜さも美しさも恐ろしさも優しさも、浅ましさも高尚さも、
中途半端過ぎて全然描き切れていない。
人間の本性というには上品すぎる。
監督のインタビューもいくつか読んでみて、
こういうシーンを描きたいという気持ちは伝わったけれど、
順序的に観客や世界への思いがあってシーンがあるのではなく、
シーンから着想している感じなので映画全体が温度に欠けているのかもしれない。
実際、社会学からインスピレーションを受けていると明言、
社会の契約について考察しているという監督。
パンフレットの解説でも観客参加型の実験映画という言葉がありました。
監督の起こした映画を使った人間観察、実験というプロジェクトに乗れるかどうか。
私は乗れませんでした。
そしてカンヌ映画祭パルムドール受賞が、
批判を許さないような一種の「権威の聖域」にならないよう
色んな感想が許される世の中であって欲しいと願います。