TaiRa

ナチュラルウーマンのTaiRaのレビュー・感想・評価

ナチュラルウーマン(2017年製作の映画)
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愛する人を失った主人公マリーナに寄り添いながら共に彷徨う映画。

マリーナと恋人が過ごす夢心地な冒頭シークエンス。青と赤の光が混ざり合いながら2人を包む様子が美しい。光のグラデーション。恋人の急死によって夢の日々は終わり、孤独で殺伐とした現実が始まる。ここに出て来る人間は皆、単色的な描かれ方はされない。1度目と2度目では会った時の態度が異なる人物、醜悪に思えた人間の微妙な眼差しの変化、理解があると思しき人間の些細な仕草。人間のグラデーション。言ってしまえば人間は全て「キメラ」かもしれない。象徴的なシーンは分かりやす過ぎるきらいがあるが、あれが無いとかなり地味な映画になりそう。ハーバートの音楽は良い。クラブのシーンは流石にちゃんとしてる。あの幻想シーンも、自尊心を保つ為には自分で自分を鼓舞しなくてはならない切なさがある。だが同時にパワフルでもある。恋人の死を知ってからもマリーナは簡単に泣かない。そこに真実味がある。余りにも大き過ぎる喪失は涙を流す余裕すら奪うのだと思う。
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