YuukiImazu

ミスター・ロンリーのYuukiImazuのレビュー・感想・評価

ミスター・ロンリー(2007年製作の映画)
3.8
有名人になりきるマイノリティな人達を描いている。でも多くの人に共通するドラマだと思う。誰もが世間体やら何やらに対して何かしら演じて生きてるだろうし。

主人公はマイケル・ジャクソンに扮装することで生きられる人。外見だけ変えても内面までは変わらんから、結局は本来の自分自身でしかない。所々ドキュメントタッチな撮影によるリアリティは、その虚しさを効果的に引き立てていると思う。

自分のアイデンティティとは。そんな自分探しの旅を描くだけかと思いきやそうでもなく、入れ子構造式に『空飛ぶシスターの奇跡』のお話を挿入することで人間の生死について語るんだから驚かされる。本筋とは絡まない突拍子のない物語を交えることで監督の死生観が伺える。

モノマネをする人々が集うコミュニティは夢世界のようで、まさにネバーランド。そんなポップで愛らしい空間の非現実性と、それから突き放すような『人生は生と死が横たわっているだけなんだよ』的な冷徹のようで達観した視点に感じる現実性が本作にはある。

その対照的な要素の差が大きくて、儚く物憂げになってしまうけど、死に向かう過程で自分を偽らず生きないとな、とも強く思えた。
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