まるたけ

女であることのまるたけのネタバレレビュー・内容・結末

女であること(1958年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

最近、川島監督の未見作をポチってちょこちょこ見てるんですが、この映画には唸りました。

人権派弁護士の森雅之と原節子の夫婦が主人公で、森雅之が弁護している殺人犯の娘(香川京子)を引き取って面倒を見ているという設定なんですが、その家に原節子の友人の娘(久我美子)が転がり込んでくることで、三人の平穏な生活がかき乱されていく、というのがが大まかなストーリーです。

それで後半、久我美子のある行動をきっかけに夫婦が大喧嘩を始めるんですが、感情的になった原節子に対して森雅之が「どうしたんだ?君、妊娠でもしたんじゃないか?」みたいなことを言うんです。もう中年の夫婦だし、二人とも堅物という感じなので、こちらはセックスのことなんて微塵も想像せずに見てるんですが、このセリフが放たれた瞬間に、映画の世界観が反転するというか、原節子が妙に艶めかしく見えてくるんですよね。

表面的には夫婦のごくありふれたやり取り、でも原節子のパブリックイメージを逆手に取った、こんな意地悪で鋭利なセリフを放り込んでくるなんて、川島監督らしいなあと思って嬉しくなりました。しかも、ちゃんとその後の展開の伏線にもなっているというところがスゴいです。

代表作とか傑作という部類の作品ではないと思いますが、この一連が観れただけで自分的には大満足でした。
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