このレビューはネタバレを含みます
ハマグチ作品じゃなければ、まちがいなく寝落ちしていたと思う。
これまでも好きになれない作品はあった。永遠に君をとか、不気味なものなど。それでも、あ、ハマグチ氏は今回ロマコメをやってみたかったのか、今は俳優の身体に興味あるんだな、とハマグチストなりに面白がることはできた。
でも、この悪は存在しないはちがった。何を撮ろうとしているのか、さっぱり見当がつかず、ハマグチストなりに面白がることさえできなかった。ただ、ラストの展開を見て思ったことがある。
それは、黒沢清なのではないかということだ。宇宙人みたいな主人公、棒読み上等の演技、不穏な画面、移動撮影、鹿モチーフの観念劇。日頃からリスペクトは公言してたけど、作風が接近してしまうとは。
しかし、黒沢清ほどの洗練があるわけではない。ハマグチ氏の個性は、俳優の身体に溶けた台詞だ、そのセリフによる会話劇なのだ。けど、それを封印してでも、一度はやってみたかったんだろうな、師匠黒沢清みたいな映画を。
帰宅後、先に見ていた家人と観念劇の答え合わせをした。こちらが手負いの鹿と主人公が観念的に呼応してる説、あちらはなんと!主人公=鹿説。でも、たしかに、主人公が鹿の化身ということなら、いろいろと辻褄は合う。
だけどそれじゃあオオカミコドモみたいじゃない?まあMVスタートの企画だからいつもと違う、ブッ飛んだお話をやりたかったんじゃないの?んー、という着地に至りました。