MayuShimada

イングリッド ネットストーカーの女のMayuShimadaのレビュー・感想・評価

4.3
これはねぇ、埋もれているお宝発掘した気分。
邦題が大したことなさそうだからけっこう気抜いて見始めたけどめっちゃ良い映画ですよこれ。今のご時世にぴったり。

マーベルのドラマの「レギオン」でレニー役をやってる女優さんがずっと気になっていて、彼女が出ている他の作品がみたいな~と思ったのがきっかけだったんですけど、やっぱりオーブリー・プラザさんちょっと狂った役ハマりますね。
ネットストーカーの女って邦題だけど、ストーカーするような誰が見ても確実におかしくなってしまった人だけがピックアップされている映画ではないところがすごく秀逸だなと感じました。

私はSNSってほとんどやらないんです。何か投稿するとしたら映画とか物語に関することだけで、自分の日常生活に関することは何も発信しません。なぜなら、超一般的な生活を送る私の日常には皆さんにお伝えするほど面白いことは起こらないから。
だけど、今SNSにハマってる人達って、ほとんどが一般の人でしょう。みんな自分の日常がいかに他人にとって興味深いものなのかをアピールしながらやってるわけで、そこには少なからず"編集"が加えられるわけですよね、より魅力的に見せるために。
そうやってフェイクが入った日常を発信することがどんどん普通になっていってるのに、それに気がつかずに他人と自分の生活を比べて落ち込んだり嫉妬したりする人が出てくる。そんな必要無いのに。だって見てるものは半分フィクションなんだから。

この映画の主人公のイングリッドは、そういう意味でのネットと現実の境界線が曖昧になってしまった人の一人だと思うんですよね。
そして、イングリッドがストーキングする対象になった人も、誰かに直接的な危害は加えていないけれどもやっぱり境界線が曖昧な人のうちの一人だと思うんです。
二人とも、もしある日突然インターネットを使うことが全くできなくなったら、とたんに生きる楽しみを失ってしまう気がするんですよね。現実を疎かにしているから。

それでね、イングリッドってすごく他力本願な人に見えるんです、私には。誰かについていかないと不安で、誰かに必要とされていないと空っぽになった気がしちゃう。だから常にくっついて歩ける人を探してる。自分自身のことはほったらかし。自分が満足できないのは"誰か"が私を蔑ろにしたせいだってどこかで思ってる感じって言うかね。

だから最後の展開がすごく恐ろしかったですよ。これからイングリッドはどうなっちゃうのかしらって。今度は常に追いかけてくれる人を求め続けるのかなっていうなんとも苦い後味の映画でした。
そこが良かったんだけどね私は。

あとあのダンですよ。一見めちゃくちゃ優しいやつに見えるんだけどさ。ほんと最後のシーンであれ…?って思うのよね。
さんざん不誠実なことされたのにまだ優しくできるのよ彼は。でもそこが引っかかるとこ。それは純粋な優しさなのか。確かにSNSが彼女の命を救ったわけだが、追い込んだのもSNS。それなら彼女をSNSから遠ざけるべきでは?彼は誰かのヒーローになりたいだけなんじゃないか…?
とか思っちゃったよね~私。
ダンはバットマンのファンだし。自分も苦しみに耐えながら不幸な彼女を支える俺をやりたいだけなんじゃ。

あ~なんかちょっと背筋が冷えるわ。
お口直しに
イングリッドのミューズになったエリザベス・オルセン演じるテイラーが最後に着ていた服が、クルーレスのコスプレな気がしてめっちゃ可愛かった。
MayuShimada

MayuShimada