ゆみな

ALOYS/アロイスのゆみなのレビュー・感想・評価

ALOYS/アロイス(2016年製作の映画)
3.5
孤独の先には何があるのか……


これ不思議な映画でしたね。
探偵のアロイスは盗撮した映像を毎日繰り返し観るのが趣味な孤独な男。彼の父親が亡くなり、気付かないうちに更に孤独に拍車をかける。ある日、盗撮対象に気付かれてしまったアロイスは、酔っ払ってバスで眠りこけてしまう。その間にビデオカメラを盗まれて、手元に残っていたのは1本のビデオテープ。中身を確認するとバスで眠っている自分の姿が撮影されていて、タイミングよくかかってきた電話の女性に翻弄されていくことになる。

アロイスは孤独なんだけど自分なりに満足いく毎日を過ごしていてね、でも本当に他人のことはお構いなしで自分の殻に閉じこもっているんだよね。そんな彼の毎日に割り込んでくる女性ヴィエラもまた孤独を抱えていて、彼女は現実を受け入れることが出来ずに妄想の世界に逃げ込んでいるわけで。彼女はある理由で入院することになるんだけれども、どん底の闇の中でも妄想の中では彼と幸せな時間を過ごすんですね。アロイスはどんどん妄想の世界にハマってそこから抜け出すことが出来なくなってくる…でも、ずっとそこに居られるわけはないんですよ。現実の時間は当たり前に動いていて、おかしな彼の様子に周りの人は困惑してしまう。そして、現実では追い込まれているヴィエラと妄想の中では幸せに笑うヴィエラ…2人のヴィエラの狭間で彼がどちらを選ぶのか…っていうのが肝かなぁ。

映像がとても素晴らしくてね、序盤の寒々しい孤独な彼を浮き彫りにする撮り方。そして妄想の中の美しい緑や華々しいパーティーの場面。どっちか選べって言われたら迷わず妄想している自分を選ぶはずなんです。でも、そこに入り込むことによって現実では更に孤独に陥っていくことに、いつか彼は気付くんですよね。だからこそのラストカットだと思ったり。現実で誰かの手を取ることはとても勇気のいることなんだな。

とても静かな映画なので退屈に感じる人もいるかもしれないけど、私は結構こういうの好きですね。一見の価値ありだと思います。おすすめ。
ゆみな

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