亜硝

ALOYS/アロイスの亜硝のレビュー・感想・評価

ALOYS/アロイス(2016年製作の映画)
4.0
まさに「冷たい窓ガラスの結露を手で拭き取るような」映画。本作でガラスはたびたび出てくる象徴的なモチーフなんだけど、確かに観終わった後もうーん、この映画はガラスだな、という印象が強く残る。

ポスターからは『パプリカ』みたいな狂気に満ちた世界を期待して観たんだけど、そういうやつじゃなかった。自分みたいな人結構いますよねたぶん。

さて、本作はイヤホン必須の音フェチ映画でもある。
肉の焼ける音、風船のはねる音、テープを撫でる音……耳をそば立てているうちに、映像にも引き込まれていく。でもできれば目を閉じて観たい(無理)
視覚的にも聴覚的にもこの映画の1番の盛り上がり所は部屋でパーティをするシーンだろう。盗撮された人々が指パッチンをしてフロアが熱狂していくところはギャグと紙一重の楽しさ。映画全体の中でパーティのシーンはめちゃくちゃ浮いてるんだけど、これが後で重要な意味を持ってくる。

そして圧巻の映像美。
クローズアップで映される対象の美しさ。
三匹の羊やハシビロコウがこちらを観ている画、玄関の覗き口からの画。
ロングでの長回しのカットは一点透視の構図が多く、キューブリック的な香りがする。
客観的、几帳面であり、抽象的な映像からは冷たさや、孤独感がビシビシ伝わってくる。
とくに白いカーテンがベランダから落ちていくカットの美しさに感動した。

ストーリーは孤独な2人がお互いに環境音を共有して仮想世界で電話デートするというもの。
ネットで知り合った女の子は自分の中で美化されすぎてて実際に会うのが怖いぜ…でも勇気を出して会いにいくぜみたいな話。いや、これすごくわかるわ〜〜という気持ちになった。

静かで上質で現代的な作品。前半のサスペンス的な展開(アルカディアを彷彿とさせる)が普通に好み。かわいい動物もたくさん出てきて最高ですね!

あとテレフォンウォーキング、まじで嘘だった。信じちゃったよ。
亜硝

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