たく

テリー・ギリアムのドン・キホーテのたくのレビュー・感想・評価

3.8
冒頭で”And now”って文字が出るのでモンティ・パイソンが始まるのかと一瞬焦った。
構想から30年、「ロスト・イン・ラマンチャ」から20年、まさか本当に観られる日が来るとは思わなかったねー。

辛い現実から妄想に逃げる話は「ブラジル」「フィッシャー・キング」「ローズ・イン・タイランド」などでギリアム監督が繰り返し描いてきたテーマで、自身の創作の狂気に重ねてるようにも思える。
狂人に付き合わされる気のいい青年の図が「フィッシャー・キング」にそのまま重なって、現実と妄想の境を行き来しながら話が進んで行く運びが上手いんだけど、いかんせんストーリーそのものが今ひとつ盛り上がりに欠けたかな。
トビーが学生時代に撮ったドンキホーテのショートフィルムに出たことで人生を狂わされた老人と若い女に対するトビーの贖罪みたいな話で、最初はドンキホーテ(と思い込んでるハビエル)とトビーの冒険譚だったのが、終盤でトビーが女を追いかける話になっちゃうのがちょっと取って付けた感じがした。

前作「ゼロの未来」がハマらなかった自分としては、久々にギリアム監督らしいカメラワークと演出を堪能できたのは良かった。
ジョナサン・プライスは「ブラジル」に始まり本作でギリアム作品を締めくくる感じが感慨深く、オルガ・キュリレンコに激しく求められるアダム・ドライバーはただただ羨まし過ぎた。
あと邦題は原題通り「ドン・キホーテを殺した男」にすれば良かったのに、話題性を狙ったんだろうね。
たく

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