ブタブタ

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結のブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

見てる間中本当に楽しかった。
こんなに作品世界に没入しキャラクター達に感情移入し、それが最後まで全く途切れなく続く。
正に最高の映画体験。

ジェームズ・ガンのマーベル解雇からワーナーが諸葛孔明の「三願の礼」よろしく「DCのキャラクターどれでも好きに使ってぶっ殺してもいいからウチ来て!」の最高待遇を持って迎えてから実現した『ザ・スーサイド・スクワッド』
邦題は“ 極”悪党、集結とか激!極虎一家みたいなまたダッサい副邦題がついちゃってるけど“ザ ”だけだと前のと紛らわしいので致し方なしか。
ムービーウォッチメンの課題映画だったので宇多丸さんの映画評聴いてから鑑賞。
全編IMAX撮影らしいのでその環境で本当は見たかったのでもう一回見たい。
「100億掛けて作ったZ級トロマ映画」って正にその通り。
宇多丸氏によると酒場のシーンでトロマ映画創始者ロイド・カウフマンとトロマの代表作、悪魔の毒々モンスターがカメオ出演してるとの事で、目を凝らしてよく見たけどカウンター前で女性と抱き合ってるロイド・カウフマンは確認出来たけど毒々モンスターは分からなかった。

『特攻大作戦』『地獄のバスターズ』等に代表される60~70年代のイタリア映画や「戦争ケイパー映画」囚人や犯罪者の独立愚連隊による敵秘密基地や要塞への決死の潜入・破壊作戦はあらゆる映画でやってるけど、タランティーノ映画にも顕著な70年代ジャンル映画のタイトル・フォントや美術・デザインや、この頃の戦争アクション映画のやたらズームを多様した敢えて安っぽいカメラワークで撮ってるとか。
なので単に特攻大作戦のアメコミ・ヒーロー(ヴィラン)版てだけでなく細部に至る迄実に細かく丁寧に「70年代ジャンル映画」の再現がなされていて、様式美にまで高められたクオリティの高い映画になってると思う。

マーベルでは絶対に見る事が出来ない血みどろ臓物ゴア人体破壊の釣瓶打ち。
みんな大好きマイケル・ルーカー演じるサヴァント率いる「最初の」スーサイド・スクワッドはまさかの囮で映画開始10分位で全滅っていうこの贅沢さと無駄遣い。

最初の全滅部隊にはハーレイ・クインやキャプテン・ブーメラン(わざわざ出してるという事は今回こそ活躍すると思ったし)がいるし予告でも目立ってた鼬人間やエイリアン迄いる豪華メンバーが呆気なく、しかも余りにもバカバカしい最期を遂げる様は見てて楽しすぎるしガン監督、「幾らでも殺してもいい」って白紙委任状の元にDCキャラクター達を一気に皆殺しにする脚本書いてて楽しかっただろうなーと思ってしまう。

とにかく人を殺しまくる、人が死にまくる。でも「動物を殺す」「子供を殺す」事に関しては実際に其れをしただけでなく其れを口にしただけでもその人間はもれなく死ぬか其れに準ずる最期を遂げる。
この辺の倫理観や道徳観が一貫して筋が通ってるのが「悪党だけど絶対に超えてはいけない一線がある」って事を示していて、其れを体現してるのが主人公でリーダーのブラッドスポートなのだと。
娘との関係やラットキャッチャー2との擬似的な父娘愛、前作でのデッドショット(ウィル・スミス)で失敗したベッタベタのお涙頂戴に堕す事なく、ストーリーの根幹を成す重要な要素としてブラッドスポートが何故戦うのか?という理由として非常に納得いくものだった。

ブラッドスポートともう一人の主人公といえる?ジョン・シナ演じるピースメーカーがとにかく大成功のキャラクターだった。
『ザ・ボーイズ』のホームランダーがスーパーマンのパロディでエピゴーネンなら、ピースメーカーはキャプテン・アメリカのグロテスクなパロディ。
「スターフィッシュ計画」の黒幕は例によってアメリカ政府で真実を知り其れを公表しようとするフラッグ大佐に対して最後に完全に「敵」として立ちはだかる。
結局最後は「悪」に与するピースメーカーに対して、ヴィランが主役の映画でヴィラン達の中にあってフラッグ大佐こそが真のヒーローだったと分かる。

かようにヴィラン達の特攻部隊の中でも正義・悪がそれぞれの立場や思想や目的によって変化していき、最後は人々を救う為に立ち上がるブラッドスポートやハーレイ・クイン達は「ヒーロー」となる。
この展開の帰結は見事。

『ジャスティス・リーグ:スナイダーカット』に続き最高の豪華DCヒーロー映画の傑作が続けて見れた奇跡に感謝〈 ﹏´ ›› ∋ )≪ナムナム🙏
スナイダーカットの「ナイトメア編」ザック・スナイダー監督がスーパーマン、バットマン、ジョーカー、デスストロークら出して、どうせ続きは作れないから「好きに」撮ったのがあの数分の映像だとしたら『ザ・スーサイド・スクワッド』はワーナーからの白紙委任状によってガン監督が「好きに」撮った130分強の映画。
でもこうなって来ると会社側の介入によって無惨に切り刻まれたデヴィッド・エアー監督の『スーサイド・スクワッド』のオリジナル『スーサイド・スクワッド:デヴィッド・エアーカット』が見たくなる。
全く違う映画だと言うしエアーカットがガン監督のスーサイド~に見事に繋がる様な気がしてならない。

あと他の人も言ってますがハーレイ・クインが前作続投メンバーのフラッグ大佐とキャプテン・ブーメランと顔見知りだとの演出からやっぱり本作は『スーサイド・スクワッドPart2』なのは間違いないと思う。
ブタブタ

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