かかし

世界で一番ゴッホを描いた男のかかしのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

20年もの間ゴッホの複製画を描き続けてきた人の物語。
複製画ではあるものの、作品にはこだわりと情熱をもって制作されていた様子が前半でよく描かれていただけに、アムステルダム現地で自分の絵が土産店で売られていることにショックを受ける所は非常に切なくなった。
高級な画廊に飾られているものだと思っていた自分の絵が観光客向けのコピー品として売られている事に加え、普通のお土産店であるにも関わらず元の売値から8〜10倍もの値段で売られている現実は、想像以上に辛いものだったと思う。

また、本物の原画に触れる中で、自分はあくまでもオリジナルを模造する事しかしておらず、自分のオリジナルの作品が一つもないことに焦りを覚える所もリアルな感情が読み取れて良かった。

帰国後に自分は芸術家ではなく職人だったと気落ちする場面では、周りからのフォローがとても温かく、周りの人にはとても恵まれたんだなと胸が熱くなった。

最後には自分のオリジナル作品を作ることを決意するのもとても良い。その題材も、自分の工房でのワンシーンや祖母の肖像画、故郷のなんてことない路地の風景画といった自分の身の回りでのものだというのも良い。

複製画の職人が最終的には1人の芸術家としての道を模索していくというラストがとても美しく感じられ、今は評価されなくても何十年後には評価されるかもしれないという前向きな気持ちを持てるのは、20年もの間ゴッホのことを思い続けてきたからこそなのだと思うと、胸が熱くなった。
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