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世界で一番ゴッホを描いた男のmemoのレビュー・感想・評価

4.3
何十年もゴッホの複製画を描いて生計を立ててきた人が、いつかこの目で本物のゴッホの絵を見たいと憧れる。その純粋なまなざし、嬉しそうな表情。オランダに降り立ち、ついに夢が叶うというときに彼は自分の作品がどこでどんな風に扱われていたのかを知る。高級な画廊に並んでるんだと思ってた、と話す彼の落胆、虚しさ、悔しさはどれほどのものだろう…次々と入る発注に寝るのも食事も休憩も工房の中だった人生。誰の絵なのかもわからずに独学で学び、ひたすら絵を描いてきた人生。
複製画に限らず、気軽に安く手に入るものの裏側はどうなっているのか、その労働と対価について、消費する立場としても考えさせられるものがあった。

実際にゴッホの絵を見たり、有名なカフェに行ったりした感想を仲間と語り合う姿が印象的。(色が全然違う、夜空があんなに明るいとは…)中国に帰って自分なりの答えを探しながら描いていた工房や母親の絵がほんとうに素敵だった。

映画の数年後のインタビュー記事を読んだら、今もゴッホの複製画も続けながら自分の作品を描いているとのこと。複製画を通してより多くの人にゴッホの絵を楽しんだり知ってもらったりできるから、と。得るものが多いドキュメンタリーだった。
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