ひでG

巴里の女性のひでGのレビュー・感想・評価

巴里の女性(1923年製作の映画)
4.1
100年前の作品なんだね、名作の輝きは永遠なり!

チャップリンフィルムグラフフィの中では、かなり異色の作品。
チャップリン映画は多く観ていますが、この有名作は未見でした。

異色な点は2つ。
まずは、すぐに、「私はこの映画に出ていません。」とクレジットが出ます。
そう、ご本人は出ません。
主演のエドナ・パーヴィアンスで本格的なドラマを作りたい、演出だけにかけるチャップリンの並々ならぬ意気込みが伝わってきます。

2つ目は、チャップリン映画は殆どない「ノー喜劇」かなりシリアスな悲恋映画になっていることです。
チャップリンお得意の賑やかなレストランシーンでもギャグは封印!

公開当時は、あまりにもチャップリンらしくない作品に観客がついて行けず、不評不入りだったようですが、その後に世界の映画関係の間で再評価されていったそうです。

舞台が巴里に移る前、田舎町でマリーとジャンがその関係を親に反対されます。
彼女の二階の部屋に階段を登って現れるマリーの義父。その影の不気味なこと。影の使い方上手いです。

すれ違いがあり、マリーだけが巴里行きの列車に乗る場面では、列車自体を見せずに描き出します。

当たり前のことを今更言うのは恥ずかしいですが、チャップリンは物語の序盤の語り口が実に上手い!

愛し合っていたマリーとジャンだが、なぜジャンが来なかった(来れなかった)かをマリーは知らない。その時点で巴里に旅することで故郷にけりをつけたのでしょう。

一方、約束を果たせなかったことの理由を告げられなかったジャンのマリーへの思いは、あの夜をずっと引きずっています。

別れをどう捉えるか、序盤の2人の思いの違いがその後の巴里での再会と別れに大きく関わっていきます。

巴里でマリーと愛し合う紳士のピエール、金持ちの嫌味と余裕とを兼ね備えていて、どこか憎めないのだが、マリーの求める世界とはやはり接することはない、

それをラストで見事に見せてくれるチャップリン監督の名人芸。

このラスト、あの名作の名ラスト(映画史に残るあのラスト)のもとになったんでしょうか。素晴らしい👍
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