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希望のかなたのmのネタバレレビュー・内容・結末

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます


いつも監督のみた作品は、みた後でいまいちストーリーを思い出せない。シーンは覚えているんだけど、
あれ、結局どうなったんだっけ?
って、他の作品と混ざって、まあそれでいいかって気になる。

今作品に関しては、過去作品に良く出ていた女優たちが再び、老いた姿で登場してくる。
世界観は変わらないので、みているこちらとしては、二十年前に作られていようが、三年前だろうが、同じ世界の中に住んでいる人たちの話なのに、
老いと若さが同時にこの世界の中に混在していることに、余計魔法のような不思議さを感じる。

現実で俳優が歳を取ってるなんて当たり前の話なんだけど、カウリスマキ監督に関しては、俳優が歳を取ったというよりも、
彼の作った世界のなかに、同じ顔の20歳の少女と50歳の女性が同時に街を歩いているような、錯覚をさせられるのだ…

今回は移民問題であるが、他作品にしてもなにかしらの社会的弱者が描かれている。
大抵そういうものって、真面目で、社会的で、メッセージ性が強くて(わたしの苦手な是枝監督的な……)映画で問題定義してます感が強くなるし、悲惨さや悲痛さ(またあきらかに悲惨さを浮き立たせるための喜劇)だけを切り取って、役者に表現させていることが多いのだけど、
カウリスマキ監督の作品には全くそんな、透けてみえるいやらしさが無い。
淡々と、現実だけを見て、耐え忍んで、生きているだけ
かと思えば、芸術にしか起こせないようなマジックをかけたりする。
彼の作品に出てくる人物たちは皆んなとんでもなく美しいと思う。それは顔の造形とかいう話ではなく。
監督は世界に降り落ちてきた美(そこには残酷も含まれている)を、描いていると思う。
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