Natsu

希望のかなたのNatsuのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.0
過剰じゃない、のが良い。ドラマティックな作り込みに慣れ過ぎている私たちに、カウリスマキはいつも気づきをくれる。
35mmで映す明度の低い北欧、ヘルシンキ。シリア難民となったカーリド(演技とは思えない見事な存在感で、山田孝之に似ている)が出会うのは、無表情で口数少なく、ただ当たり前のように心優しい人々。鎮座するジミヘン、「音楽か死か」、かき鳴らされるロック、フォーク、サズの音色は人生の肯定だ。
凄惨な殺戮シーンも感動的な再会シーンもない代わりに、笑える日本ネタ、大胆な省略やご都合主義など、この映画はやさしい虚構に満ちている。社会の現実をシビアに見つめる批評性を持ちつつも、あたたかく、時に鋭いユーモアで包み込みながら観客を信じてくれる、そのまなざしに私たちは救われ、試される。
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