マクガフィン

少女邂逅のマクガフィンのレビュー・感想・評価

少女邂逅(2017年製作の映画)
3.7
高校3年生の進路の岐路に立たされるような、思春期の終わりを迎える多感な時期。現在・将来の不安や鬱積が混在してバランスが崩れる刹那的な少女の青春の終焉を独自の映像美で繊細に表現していて、大いに堪能する。

主演の小原ミユリ(保紫萌香)と富田紬(モトーラ世理奈)の色白とそばかすの外見までも対比のようなキャラの棲み分けが良い。自分好みに髪型を変えるたり、口紅の色を塗りなおしたりする、GLのような関係以外の危さの匂わせ方も巧み。タイトルや紬にも関わる「カイコ」の、成虫の前に茹でられ美しい生糸だけを搾取される虫をメタ的に表現するセンスに唸らされる。

保紫の自己主張がうまくできず、不器用でリストカットできない程に弱くて脆い考え方は悲観感が漂う。受動的で迷える自分を救ってくれる現実離れした王子様願望的な既視感あるが、ディテールの構築が上手く、イジメられている世界をノイズのような雑多な音で表現することが印象的で、監督の自叙伝的な雰囲気が漂う。
紬の眩しさや洗練された綺麗さは、保紫から見た願望で、東京に憧れるメタ的にも。

女子高校生や地方の閉鎖感・閉塞感の設定の中で、携帯でお互いを撮り合った2画面の映像は走馬灯のように淡い。
特に保紫と紬が公衆電話で雨宿りのシーンが印象的で、閉塞感極まる密閉した公衆電話から、駆け出す模様をアングルを変えないで、公衆電話のガラスに反射して幻想的に映し出されてハッとさせられる。アクセントとしても効果的に。
時に美しく、時に淡く、時に脆い、少女の青春の儚さを、ファンタジー的に映し出しことが上手く、積み重ねることで刹那的な雰囲気に。

保紫のボサボサの髪、紬の顔色を伺う見上げる視線、いかにもイケていない鼻を擦る仕草や佇まいからの、次第に人間味を帯びながら美人になっていく模様と、願望から少しずつ現実に移ろうことと重ねる演出や絶妙な余韻も冴える。

女性監督ならではの表情や仕草の使い分けた演出も巧みで、劇団出身監督かと思う程に。今後の作品が楽しみに。