尿道流れ者

血染の代紋の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

血染の代紋(1970年製作の映画)
4.2
コンビナートの利権争いで対立するヤクザ達と、建設予定地であるスラム街に住む住人との三つ巴の争い。
役者は菅原文太をはじめに仁義なきメンバーで構成されていて、なんだか同窓会のようなほんわかした気持ちにさせられる。菅原文太と梅宮辰夫の2人は親友という設定で出ていて、この映画の後に撮られる仁義シリーズでの2人の戦友としての絡みを考えるとニヤニヤしてしまう。

古きヤクザ社会が世相に押され崩壊の一途を辿る中、新たに組長として誕生する菅原文太は辛抱強く与えられたスラム街の住人の退去という指令を果たそうとする。しかし、菅原文太自身もそのスラム街出身であり部下にもそのスラム街出身の者がいるため深く悩み、時に涙する。仁義なき戦いの時の菅原文太と違い、この映画では昔ながらの任侠映画の親分としての役回りで哀愁が漂う。
対する梅宮辰夫は同じくスラム街出身で、ボクサーを夢見ていたが、夢はついえて流れ者となり、またスラム街に戻ってきて、新たな夢のためにヤクザ間を立ち回る。
親友でありながら運命的に対立する2人の姿は切なくもかっこいい。

後の仁義なき戦いのようにヤクザ同士の狡猾な裏切りと頭脳戦で菅原文太は窮地に立たされる。そして、最後の最後にいままで敵対していた梅宮辰夫と組み、けじめをつける。堪らない。素晴らしい。


仁義なき戦いをムーディでよりドラマチックにしたような作品。仁義なき戦いと比べて名台詞と呼べるものが無く、その点では劣るが、話や雰囲気自体は仁義なき戦いに劣らない。
鶴田浩二の暴れっぷり、菅原文太と梅宮辰夫の友情、非道な戦い方に無念な死など深作欣二のヤクザ物が好きな人は拭いても拭いても涎が垂れるネタの数々。仁義なき戦いファンには是非観てほしい。