Yoshishun

映画ドラえもん のび太の宝島のYoshishunのレビュー・感想・評価

3.8
“パワータイプのドラえもん映画”

シリーズ最高の興行記録を保持している映画ドラえもん38作目。『のび太の南海大冒険』以来の大海原を舞台とした作品だが、ストーリーよりもとにかく勢い重視のパワータイプな内容だった。

まず、本作の脚本はあまり、というより全く褒められたものではない。そもそも静が捕らえられた理由も、捕らえ続ける理由も、意味ありげな新しい生命体も、物語の根幹を揺るがしそうな設定の数々は劇中でほぼ深堀りされることなくスルーされていく。シルバーが研究に取り憑かれていく様も一辺倒で、最初から最後までとにかく勢いで乗り切る。

しかし、昨今のドラえもん映画で最もしずかちゃんをヒロイン枠として活躍させ、クライマックスではのび太とパパ、フロックとシルバーという父と息子の物語として帰結させ、特にラスト近くではドラえもんが元気玉っぽい佇まいで本気で死にかけながらものび太と静の決死の救出劇と中々熱い展開が続く。加えてここぞという場面では作画の気合の入りようも凄まじく、ドラえもん映画ならではのお約束展開もこの作画と相まって熱量はかなり感じられた。

本当に勢い重視なので細かな粗だらけなのだが、EDの星野源による主題歌を含め、細かいこと気にせず最後まで突っ走っていく潔さはドラえもん映画ならでは。意外に楽しめた。
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