さすらいの旅人

囚われた国家のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

囚われた国家(2019年製作の映画)
3.2
ナット・キング・コールの「スターダスト」が静かに流れるSF映画
【VOD/Amazon Prime/配信視聴】

エイリアンに支配された世界に興味があり鑑賞。
これは賛否両論映画だろうと観た後に思った。
「インデペンデンス・デイ」みたいな壮絶なアクション映画を期待すると肩透かしになる。逆に想像できない世界の社会秩序に興味のある方は心に強く響くかも知れない。
私は前者のため期待はずれであった。

本作は観客には何の説明もなく、かつエイリアンの実像を見ることなしに支配されてから9年後の世界に入る。興味あるエイリアンの姿については暗くて良く分からないが、後で少ない時間だが姿を現す程度だ。高等生物には見えないな~。
物語はエイリアンの監督下の組織とそれと敵対するレジスタスとの戦いを中心に展開される。それは、ほとんどが暗い画面の中で人間どうしの社会派ドラマとして描写される。
そこではエイリアンの特殊兵器や宇宙船は出てこない。そのかわり、反社会的人間を宇宙へ追放する岩みたいな浮遊船が空を飛ぶ程度だ。

ある映画サイトでは、この映画は人間対人間の戦いを描いた映画「アルジェの戦い(1966年)」と同じだと絶賛していた。なんで古い映画を持ち出して来たのか不明だが、私としては何もSFエンターテイメント世界にそれはないだろうと反論したくなった。「未知との遭遇」みたいな友好的宇宙人ではないので、やはり人類総攻撃してスッキリしたい気持ちだ。まあ、監督は自分の意図的した世界観を表現したかったのだろう。

主演の捜査官マリガンを演じるジョン・グットマンの存在感が凄い。元々大柄で四角い顔(失礼)は一回見たら忘れられない。信念の強い人物を演じさせたら正に適役だ。
このマリガンが娼館を訪ねた時にレコードから流れるナット・キング・コールの「スターダスト」は映画の中で唯一癒される瞬間だ。2027年の時代、何でアナログレコードで音楽が流れるのか不思議だが、殺伐とした世界にレトロな安らぎの音楽なので、強く心に残ったのだと思う。