TaiRa

囚われた国家のTaiRaのレビュー・感想・評価

囚われた国家(2019年製作の映画)
-
60年代のフランス映画みたい。レジスタンス映画一筋なルパート・ワイアット。

『猿の惑星:創世記』の監督だとちゃんと思える。裏表というか同じというか。抑圧され管理された者たちの蜂起。反抗の発火点。エンディングもセルフオマージュ。「反逆者/英雄」の弟は事態に振り回される。最も弱い存在であり、「死者」となった兄に守られる。特捜司令官は体制側の人間であり、兄弟の監視者。登場人物は誰も真意を口にしない。テロリスト同士互いの素性を知らない。記録上死んだ事になっている存在しない闘士たち。仲間にだけ分かるサインで意思疎通する。決起の印が連鎖して行く箇所が上手い。抑圧された人々の抑制された演出が渋い。メルヴィル的と思える所以。カメラワークが荒々しいのは『アルジェの戦い』オマージュ。ワイアットは普通に撮ろうと思えば撮れる人。SF版『アルジェの戦い』がやりたかったのだな。破壊工作へ向かうまでの音楽の入れ方、テンションの上げ方が最高。『猿の惑星』から一貫した格好良さに対するこだわり。存在しない闘士の武器は目に見えない。目に見えず、表面上は何もないが、それは確かにあり、絶大な力を持っている。このディティールも素晴らしい。最も意志を見せなかった男=最も強い意志を持った男の真意を、最も弱い者が目撃し「マッチに火をつける」までの物語。
TaiRa

TaiRa