酸化

僕の世界の中心はの酸化のネタバレレビュー・内容・結末

僕の世界の中心は(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

新しい価値観で家族や恋愛、友人を含めた悩み、人生を描いた作品ですごく感動しました。

主人公の性指向が作品の主題ではなかったところがすごくよかったと思いました。
ゲイであっても、他の恋愛と変わりなく(恋愛関係のいざこざ、相手の真意が分からないなど)表されているところは本当に考え抜かれていると心からほっとして見られました。
(性的マイノリティが出てくる作品での、性的マイノリティであるからこそ生まれてしまう悩みやひょんなところで感じる生々しい差別にひやひやして見ずにすみました。性的マイノリティを取り扱っているからこそ、真摯に差別を描くのなら見られるのですが、『娯楽として消費』するのならこれくらいは描いてもいいでしょうくらいに映される差別はかなり苦しいので...)

主人公がゲイであることが当然のごとく受け入れられていて、主人公の持つものが「そうあるもの(なぜあえてゲイなのか、同性同士の恋愛を表現するのか)」としてあって心から落ち着きました。
(あからさまに性的マイノリティや多様性を気遣った表現、性的マイノリティに配慮していることを売りにしているのではないと私は感じました。)

一般から外れた家庭が複雑な問題を抱えつつも、家族ということを捨てきれずに大切なものとしてひたむきに、もがきながらも向き合う主人公と、おそらく主人公をひとときでも支えたのはニコラスだったのだろうな...と、彼らの関係がうまくいかなかったことを踏まえても、出会えてよかったと思いました。
(異性・同性の恋愛観や恋人の奪い合いよりも、フィルとニコラスの恋愛に対する価値観が違ったのだろうと彼らの関係性が言葉少なくもしっかり描かれて対話によって理解しあっていたのもすごく好きです。ニコラスはフィルの母親の印象からフィルにもおおらかに受け入れてほしかったのに対し、フィルは恋人同士で大切にしたかったのかなと私は感じました。)

家族の過去による隔たりを、母親の恋人が「(血のつながりはなくとも)無関係ではない」「君たちが大切だから」という場面で、ずっと母親はこうして苦しみを支えて向き合ってくれる人を無意識に求めていたのかなと思えて感動しました。

(性的マイノリティを扱う作品ですが、あくまでも性的マイノリティではなく『フィル』という人物を描いているように感じられて私はとても好きです。また、複雑な家族であることを受け入れ、常にいるのではなく、中心と捉えるほど重要な場所ではあるけれど、どこかに出ることもしたいと、複雑な家族に生まれたことを安易に肯定・否定もせず、考えて向き合っていると思えてすごく好きです。)
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