浅見Lefty恭弘

累 かさねの浅見Lefty恭弘のレビュー・感想・評価

累 かさね(2018年製作の映画)
4.0
何より、W主演の土屋太鳳さん、芳根京子さんの2人の演技が立派であった。
昔、「火宅の人」という映画(深作欣二監督、1986年)の劇中劇で、原田美枝子さんが、セリフの下手な舞台女優を演じていたのを見て、感心したことがある。「累」の序盤の劇中劇でも、土屋さんは、丹沢ニナという役者の下手くそぶりを見せてくれる。しかし、この映画の場合ではさらに、中身が累になって、巧みな名演を見せるところを同じ土屋さんが演じる。さらに「憧れの男性を取られてはなるまい」と、必死になったニナが、本人的には“当社比200%”くらいの“良い”演技をするものの、明らかに累には遠く及ばないという、手の込んだシチュエーションまで一人で演じわけるのである。
サロメ「七つのベールの踊り」は、ダンスの出来るこの人ならではで、圧巻。もちろん、リヒャルト・シュトラウスのオペラの場合のようなエッチなシーン(ストリップの末、肌襦袢でヌードのように見えるまでやる)はない。
明朗な芳根さんが、累の暗さを全身で表現して見せた点も、特に感心した。訪ねてきたニナの母親が、ニナの顔をした累を娘と疑わないのを目の当たりにする。さらに、累の姿になっているニナは、実の母親から他人扱いされてしまい、深い哀しみと絶望感に襲われる。それが、表情だけでなく、後ろ姿からも伝わってきた。
浅見Lefty恭弘

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