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祈りの幕が下りる時のmatchypotterのレビュー・感想・評価

祈りの幕が下りる時(2017年製作の映画)
4.1
何だ、これは、、、。
ちょっと凄すぎるな、これは。

「嘘は真実の影」

東野圭吾原作『新参者』加賀恭一郎シリーズ。
『麒麟の翼』に続き、日本橋近辺に因んだ話ではあるが、もはやそんな“因んだ”とかそんなレベルの話ではない。

加賀恭一郎にとっては、もう自分の人生の縮図というか、ここまでの足跡そのものみたいな事件に。

加賀恭一郎の母親の謎の失踪と死。
失踪先での亡き母の動向を調べに調べても掴めない足取り。それを追って16年。

全く別の事件が、その扉を開く、、、。

加賀恭一郎、阿部寛のキャラが元々とても好き。
足を使った地道でベタな捜査。
そこから紡ぎ出される事実からの裏どり。
それを土台に生み出される論拠。

探偵として推理しているわけではなく、それを警察官として、何が起きてたとしても、相手が誰であっても、客観的に、公正に、真っ直ぐに立ち向かう。

それを、今回は実の肉親と自分の人生が関わっていても貫く。

「まだ、調べていないのは、誰だ、、、俺か!俺ならどうする?俺がキーならどうなる?」

この切り口はめちゃくちゃ斬新。
自分を事件の相関図にハメ込むことで、自分のことなのに、客観的に自分を見つめ、自分の知らない糸口を探す。

素晴らしいアイデアである一方で、自分にとってはなかなか過酷。
自分で自分の催眠術をかけて、自分の知らない深層心理を自分で聞くかのような手法。

こんなこと、加賀恭一郎にしかできない。

阿部寛と松嶋菜々子の存在が、まったく意図せず、偶然と必然が混ざって別方向から鏡に写ってる自分同士のように近付いてくる。

そして、松嶋菜々子の壮絶な過去。
これほどまでに、悲劇としか言いようのない人生を生きてきて、いや、生きてこれたその背景。

どこを切り取っても重厚な背景の数々が、ちょっとしたことでパズルのピースのようにハマっていく。

まさかハマらんだろう、のヤツがハマる。
もう、これ以上ハマらんだろう、がハマりにハマってくる。

何もかもが繋がってる。
布石やダミーとかではなく、本当に全てに意味がある。
この流れ、凄すぎる。

こんな救いようのない話の繋がりが、至極の刑事エンタメになるんだから、東野圭吾とこのシリーズ、あっぱれとしか言いようがない。

小日向文世、自分が彼なら彼のような人生を歩めるのか。
もう、想像を絶する世界の先が観れる作品。
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