千年女優

祈りの幕が下りる時の千年女優のレビュー・感想・評価

祈りの幕が下りる時(2017年製作の映画)
2.5
失踪した母の仙台での死を知らされ遺品のカレンダーに記された日本橋の橋の名に気を留めて日本橋署勤務を志望した刑事の加賀恭一郎。都内で発生した滋賀在住女性の殺人事件を調査する従兄弟で捜査一課の松宮から関係者の浅居博美との交友を理由に相談を受けた彼が、自らにも深く関わる事件の真相に至る様を描くサスペンスドラマです。

日本橋署勤務の刑事が下町らしい人情深い事件を捜査する東野圭吾の推理小説シリーズを原作とする阿部寛主演の人気TVドラマ『新参者』の劇場版第二弾で、加賀の日本橋勤務の理由が明かされるシリーズでも転機となった原作を、前作の土井裕泰から『私は貝になりたい』の福澤克雄へ監督を変更してゲストの松嶋菜々子と共に盛り立てます。

よく指摘されるようにサスペンスの構造は松本清張の『砂の器』に酷似していて、日本の村社会の構造を絡めた差別という主題が差し引かれたことで失われた重厚感を東野圭吾が好んで使う「犯人の献身」のキャッチーさで補うつくりでは既視感や軽さは否めず、「泣けるミステリ」と「非人道的な殺人」の相性の悪さを拭い切れない一作です。
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