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ミスター・ノーバディのILLminoruvskyのレビュー・感想・評価

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
4.2
原題『Mr. Nobody』(2009)

監督・脚本 : ジャコ・ヴァン・ドルマル
撮影 : クリストフ・ボーカルヌ
編集 : マティアス・ヴェレス、スーザン・シプトン
音楽 : ピエール・ヴァン・ドルマル
出演 : ジャレッド・レト、ダイアン・クルーガー、サラ・ポーリー、リン・ダン・ファン、他

離婚する両親のどちらと暮らすかという少年時代の選択に始まり、彼が選んだ、あるいは選んだかもしれない人生が絡み合う、人生の選択によって生じるさまざまな可能性を、複数のパラレルワールドで描く異色のファンタジー映画傑作。

「バタフライ効果」「超ヒモ理論」「エントロピー」「宇宙大収縮」といった科学理論を映画の構成に取込み、"ミスター・ノーバディ"の壮大な人生の物語を、映像的快楽に満ちた様々な映像表現上の実験的なアイデアを駆使してフォトジェニックかつ色鮮やかな色彩で映像化したジャコ・ヴァン・ドルマルの圧倒的才能を体感できる極上の「映画」体験。

赤、青、黄色、衣装や小道具、カメラワーク、光を含めた画面の色合い、ルックといった、非常にテクニカルな部分でそれぞれのパートをシームレスに描き分けていて、この物語の複雑な迷宮に迷う事がなくスムーズに作品世界に没入させる手腕はホント凄い。

そして、時間という概念のコントロール、様々な人生、その人生を切り取り、体験するというのは、ズバリ「映画」そのもののであり、この作品はジャコ・ヴァン・ドルマルの「映画論」映画としても素晴らしい。

記憶や夢をテーマに縦横無尽に展開する、いくつかの作品群の中でも突出した出来映えの大傑作。

「映画」ファンは絶対に観た方が良い作品だと思います。
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