椋太

ミスター・ノーバディの椋太のレビュー・感想・評価

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
3.0
どんなイメージでどんな脚本だったんだろう,どうやって作ったんだろうかと思う.こんなにバランスが優れた複雑な構成は凄い.
という感じで,まず作りのほうに目が行くわけだけど,内容にはそんなに興味を惹かれないからだ.”ただ,何もないんだ”というメッセージであるならばそういうものか,と納得はする.

どの選択にもそれなりの意味があるけれど,それを観測することは出来ないのだから,今しかない.総ての選択肢は無意味でしかない.それは,過去を選べる世界になったとしても同じだろう.すべてプログラミングされた可能性の範疇で生きていて,喜びも悲しみも,虚しいものだ,と生きている振りをする.いつか,誰かの箱庭の中で生きていたとしても,それを認識することは出来ないのだから,今ある幸せを総てと思って精一杯感じたいと,そう思える瞬間を待っている.ただ,今想像できる可能性はやっぱり陳腐だけど.
お金のために働く必要性から解放されると,人は幸せのためだけに働くことが出来るようになる,と言うけれど,老化の感覚が失われると何が生きる基準になるんだろうか.死に対する恐怖を忘れた人類は全く別の星の生き物のようで,老人の人格に対する尊敬は感じられず,気味が悪い.
椋太

椋太