椋太

プラットフォームの椋太のレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.3
本作は現社会の縮図、というわけではない。本作の舞台を下記のように説明しているコメントがあり納得した。
0層が今、あるいは近代までの地球。
層は年代を表しており、テーブルの上に置かれた食べ物は資源だ。下層に降りるほど残飯は上層の人たちが食い荒らし遂に何も残らない。上層は下層を顧みない。下層を経験をしても、多くの人間は上層に戻れば、下層で不幸な思いをした以上に資源を食い荒らす。

各人はおそらく、人類の性格を表す代表値として投入されている。この穴は管理者にとってアリの巣を覗くような実験装置で、富の分配の有用性、その実現の可不可の確認が目的か。であれば、後世にまで資源を残したことは実験完了の伝言となる。

人の意義が『続く』ことであるならば、本能的な取り組みに近いだろうが、実際は今生が良ければ先の未来はどうでもいい。小説の三体でも、数世代先の宇宙人の侵略戦争のために今の自分の貧困を是とする意識は結局芽生えなかった。
この実験は後世へ遺産をいかに残すかに視点があったのならば、現実とは乖離したシミュレーションだったと思う。分配を行った主人公が見ていたのは今、このシステムでしか無い。そして先のことを目標にするのはおべんちゃらだと思う。
椋太

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