りゅっくサック

ミスター・ノーバディのりゅっくサックのレビュー・感想・評価

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)
3.8
【2092年、細胞の永久再生化により人類が死ななくなった未来。
その手術を受けていない地球最後の死ぬ人間ミスター・ノーバディ(=誰でもない男)は、記憶も混濁し死期が迫っていた。
一大ニュースとして世界に報道される中、1人の記者が問いかける「人間が不死になる前の世界とは?」
老人は自分の過去に想いを巡らせ語り出す。
いくつもの過去の人生を。】

当初はどんでん返しミステリーか
何が真実で何が嘘か、そもそも自分は何なのか?なサスペンス
それとも自分の人生をタイムリープし最愛の人と結ばれる恋愛SFなのかと誤認していた。

しかし「あの時こうしていたら人生は良くなってた?悪くなってた?」
という誰でも236回は考えるようなことがテーマ。
本作はそれに加えて宇宙多元論(パラレルワールド)や時間の法則と生物学的な人間の本質にも迫っていく。

重大な人生の分かれ道に立った時、人はどちらかを選び、どちらかを捨てる。
じゃあどちらも選ばなかったら?それも一つの選択である。
そうしてしばらくすると来た道を振り返って思うはず「あっちに行っておけば…」と。

その問いに対してこの作品は「そのどれもに意味がある」と言っている。
相思相愛の子と結婚しても、妻の心が離れても、自分の心が妻から離れても。
そのどれも今の自分が出した答えで、正解も不正解もない。
そして死んでしまっては意味がない。
未来が分かっていたらつまらない。

つまり生きて今の自分が決めた事なら何だろうと意味がある、何があるか分からないから人生って楽しいんじゃん!と。

ミスター・ノーバディと呼ばれた男の人生はどこへ向かっていくのか。
どれが正解だったのか。
自分と重ね合わせてどう感じたか。
余韻にどっぷり浸る心地よい時間がエンドロールに待っていました。

最近はスーサイド・スクワッドやブレードランナー2049などで、ミステリアスなキワモノが多いジャレッド・レトも
老人から長髪+ヒゲのワイルドな風貌、眼鏡をかけた会社の重役、あるいは未来人など
様々な表情や声色で恐ろしいぐらいの演じ分け。
3人の大人とティーン時代で計6人出演するヒロインも全員が全員チャーミング。
特に15歳のアンナを演じたジュノー・テンプルはクロエ・モレッツにも似た雰囲気を持つ美少女で、あのいたずらっぽい笑顔にキュンキュンしてしまった。

人生経験がさほど無い今の自分ではこの程度の解釈しか出来ませんでした。
きっと数年後また見返したくなるでしょう。
様々な選択をした先にいる数年後の自分が見たらどう感じるのか、楽しみです。

最後に、この映画を見るという選択をした今の僕は「こんな人生でも案外悪くないかも」という気持ちになっている。
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