冗談抜きで震えた。
ある意味、ラストのメタ構造の挿入がこの作品を不可解なものにしてるけど、わたしの解釈としては、キアロスタミは物語の創造主、言わば“神”の視点で主人公の生死を左右することをしなかった。つまり人の生死は誰かの、そして自分自身でも左右できるものではない、そういうメッセージだと解釈した。
自分の自殺を手伝ってくれる人間を探すうちに、生きる希望を知った主人公だけど、雷が鳴り響く中、穴の中で寝転がるのは、このあと嵐になって土が土砂となって主人公に降り掛かってもおかしくない、“死”の示唆だと思ったんですよね。あの博物館の剥製室にいるおじさんが明け方にあの穴にたどり着いた時に主人公は死んでてもおかしくない(逆に雨さえ降らなければおじさんが主人公のことを穴から引っ張り上げてくれるだろう)。
これ単体で見ると、ラストシーンで????ってなってたんだろうけどキアロスタミ特集の最後に観るには素晴らしすぎるラスト1本だった。キアロスタミ、めちゃくちゃ好きな作家になった。どの作品もラストが素敵。虚構であること、映画であるからこそできること。