[時代の終わり、しかしそれは今日ではない] 90点
大傑作。時代の変わり目、時代の終わり。アイスマンは出世して現場から離れ、グースの息子はトップガンに入るほどに成長するまで時代が流れても現場に残り続け、いつしか有人飛行は終わりを迎える時代に、"それは今日じゃない"と言い切るトム・クルーズ。カッコいいの一言に尽きる。そして、そのカッコよさを清々しいまでに魅せきる。冒頭のマッハ10試験飛行とエド・ハリスとか、『ライト・スタッフ』そのものって感じだが、そこにはフロンティア精神からすっかり摩耗してしまったアメリカン・ドリームまでを全て受け継ぐような覚悟がある。アメリカの夢、映画の夢の終わりの時代、だがそれは今日ではない、とトム・クルーズは背中で語る。
『スターウォーズ』のシークエル三部作でもそうだったが、本作品も空中戦の魅せ方やそれに関する情報の簡素化はゲームっぽさを感じる(トレンチランとか『新たなる希望』そのもの)。作戦地域をエリア分けし、"どこがどうなれば成功か"、"どこで何をすれば凄いのか"という部分をキチンと説明した上で、その通りに魅せきる。派手じゃない部分もその難易度を刷り込んでいくので、ラストの実戦では画面を見るだけでマーヴェリックたちの凄さが分かるのだ。最終目標となる基地破壊が作戦詳細以外かなり抽象的なのもゲームっぽいが、これが"どこの国か分からない"という点も興味深い。普通ならロシアだの中国だの南米だの東欧の存在しない国家だのを当てはめてきた気がするが、最終的には敵がどこかなんてどうでも良く、だからこそ本作品はマーヴェリックとルースターの関係性に違和感なくフォーカスできる。あと、個人的に敵機とこちらの見分けがしやすくなって助かった。
トム・クルーズが大勢の仲間に囲まれてわ~い!って感じのシーンを久々に観た気がする。なんだか無性に寂しくなって、涙が出てきた。