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金子文子と朴烈/朴烈(パクヨル) 植民地からのアナキストのニコのレビュー・感想・評価

3.6
ちゃんとまじめに書こうかな。

パクヨルと金子文子、出会うべくして出会った国籍の違うふたりの愛の物語でもあるけれど、思想を含めて、彼らなりの自由と平等、幸福を求めた若者たちの情熱の話でもある。

おおよそ100年前の日本が舞台。
関東大震災が起きた不安と混乱の中に「朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた」とデマが広まる。

自警団が朝鮮人たちを虐殺したことは、おそらく事実だろうし、今も遺恨が残る出来事として慰安婦問題や南京問題と同じように定期的に話題になる。

でも、そもそもなぜ、100年前の日本に朝鮮人がそんなに住んでいたのか。それは、日本が朝鮮で土地調査事業を名目に、農民の土地を奪ったから。
その頃の朝鮮には農業以外の産業が不足していて、結果、土地を追われた朝鮮人たちは、生活の糧を求めて満州や日本に渡ることに。日本は日本で、急速な工業化と共に、紡績や炭鉱などで安い労働者を求めていたそう。

もうまさに、大きな歴史のうねり…!!

日本がアジア諸国を植民地化しようとしていたことは学校でも習った。大国から身を守るためだったとしても、やはり当時のことを調べると、日本人がまさかこんなに野蛮だとは信じがたいけれど、きっと受け入れるべき事実なんだろう。

話の中にも出てきたけど、皇太子時代の昭和天皇を狙った暗殺未遂事件は、日本人が起こしてる。通称「虎ノ門事件」。
犯人の生まれはそれなりの名家だったはずなのに、やはり当時の社会のありように疑問を持ち、結果テロリストに身を堕としてる。
この時代のどんなドラマや映画を観ても、憲兵や自警団は酷いし、同じ日本人であっても今とは比べ物にならないほどの差別と搾取、貧困があったはず。
小林多喜二とかもまさにこの時代。彼も拷問死してる。


この映画は決して反日じゃない。むしろ、葛藤する日本人を含めて丁寧に描いてくれてて、日本に対するリスペクトを感じられる。(当時の官僚の水野錬太郎の描き方だけは最初から最後まで超嫌〜な感じ、笑。今も子孫がいるはずだろうけど。)

100年経った日本と韓国の関係は、良くなったとは言い難い。
今もロシアとウクライナは戦争してるし、他にも争ってる国はあるけど、対1人の人間同士としてなら仲良く出来るはずなのに。



金子文子やパクヨルを調べると、映画の描写と齟齬があるようだけど、それでも上っ面ではなく史実に基づいた良い映画だと思う。
ニコ

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