こへ

寝ても覚めてものこへのネタバレレビュー・内容・結末

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

あさこは愛する人"ばく"が突如消えてしまうことで彼を一度失う。大阪を離れ、数年後東京で彼と再開したかと思いきや、それは見た目は同一でも全くの別人"りょうへい"だった。その現実を受け止めつつも昔の面影に恋をしてしまうが、また失ってしまうことを恐れ自ら離れる決心をする。だが震災をきっかけにあさことりょうへいは運命的にまた巡り会い、一緒に生きることを決意するが..

ばくという名前は夢食いとかかってる。りょうへいを捨てばくと2人で北海道に向かう車内であさこはこぼす。「りょうへいと暮らす時間が夢のようで成長しているような気でいたけど、目が覚めたら何も変わっていなかった。」
寝ても覚めても、行き場がない。
2人の逃避行は仙台の手前であさこが別れを告げて終わる。あさこはひとりで景色を遮る堤防を登って海に辿り着き、波風を全身に受けて上手に向け歩いていく。

あさこは絶対的に間違っているにも関わらず、それを受け入れるりょうへいも間違ってもいるし、同時に強い男でもある。彼もあさこと同じく愛する人を一度失い、再度失う怖さをあさこよりも強く感じているのにあの決断ができるのは彼女より一回りも二回りも大人だ。彼は彼女の良くも悪くも感情的でまっすぐな性格を知っているからこそ、最後のシーンで彼女の言葉を聞いて少し希望を持てたんじゃないかと思う。

村上春樹の"国境の南、太陽の西"と響き合うところがあった。幸せを捨てて太陽の西に虚ろに引き寄せられていくハジメの姿はあさこと重なる。
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