りょう

寝ても覚めてものりょうのレビュー・感想・評価

寝ても覚めても(2018年製作の映画)
3.8
 2年前くらいに1回目を観ました。「ドライブ・マイ・カー」も「偶然と想像」も公開されていなかった当時(まだどっちも観てません)、しかも主演2人のスキャンダル報道もなかったので、何の先入観もなく、新進気鋭の濱口竜介監督というイメージしかなかったころ…。
 当時の印象は、3.11の描写はまだしも、宮城県の復興支援のドキュメントタッチのくだりが浮きまくっていたので、これがなければ秀作かなと思いました。自分の地元でもあるので、東日本大震災の描写は、よほどしっかり描かれていないと、どうにもマイナスの印象しかありません。
 それはそれとして、そもそも恋人を顔で選ぶことってそんなに悪いことなんでしょうか。物語の中核的なテーマではありませんが、かなり重要なポイントだったので、その価値観を共有できないと、登場人物の反応や心情などを理解できないような気もしました。
 主人公の泉谷朝子は、いい意味で日本映画史上最恐の女性の1人です。過去の恋人を忘れられない人や再会してヨリを戻してしまう人、それが不倫や浮気行為を伴うことも含めて、映画にはたびたび登場するエピソードですが、ここまでナチュラルに罪悪感も希薄なまま恋人を裏切って傷つけることをやってのけた女性は初めてでした(しかもそれを許して欲しいと…)。恋愛関係にとどまらず、そもそも人間社会に適応できないレベルの人物であるにもかかわらず、本人がそれに気づいていない雰囲気が最恐です。昔の知人に彼女に似た雰囲気の女性が1人いました。意図された演出と演技かどうかわかりませんが、結果として彼女の一連の描写は秀逸です。
 なんだか悪口のようになってしまっていますが、なぜか癖になる東出昌大さんの主演ということもあって、個人的には好きな作品です。
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